”ケーキの切れない非行少年たち”を読んで 問題はやる気ではない

書評

2019年夏に出版され、長い期間売れ続けている本の感想を綴りたいと思います。

私もタイトルが目を引いたので、どのような本か気になっていたので、購入することにしました。読んでみたところ、内容は、正直今まで考えたことがなかった世界の話だったので、驚きの連続でした。

本書は、読む価値ありの良著だと思います。 

 

目次

なぜ、評判になっているのか

一番は、本書のタイトルになっているケーキの切れないを説明する図が衝撃的であったことです。

ある非行少年にケーキを三等分するように話をしたところ、全く出来ず、見当違いの答えを出してくるシーンがあります。その答えが本の帯に付いており、想像もつかなかったことから、本書が広まっていったものと思われます。

私も、この本の帯に驚き、一体内容はどうなっているのだろうと思い、手に取りました。

読んでみての感想

非行に走る少年たちは、読む・聞く・想像するなどの認知能力が低い傾向にあり、それが原因で学校の授業についていけなくなり、周囲からいじめられ、非行に走って行く割合が高いと紹介されています。

子供の時を思い出すと、確かに授業についていけなくなり、グレている子がいたなと。幸い、学校の先生がフォローしている方だったのか、少年院に行くような問題児はいなかったので、深く考えていませんでした。

その時は、やる気が無いんだなと思っていましたが、本書はそれを否定し、個々の認知能力に原因があることを指摘しています。

受け取った五感の情報をうまく処理できず、全く違う受け取り方をしたり、受け取ることすら出来ないとなれば、勉強についていけず、授業がつまらないものになるのも分かります。

本書を手に取った人は、そのような経験がないため、驚き、この本を読み、話題にしたのでしょう。意識しなくても、出来ている人には本書の内容は信じられないものになっているので。

ただ、本書では、認知能力が高い非行少年もいるので、原因の全てというわけではありません。この辺りは詳細には触れていないですが、家庭環境の影響が大きいのでしょうか。この辺りは、趣旨と違うので、あまり触れられていません。非行少年全体のデータが示されていれば、全体像が分かるのではと思ってしまいました。個人情報が厳しいので、難しいのかなと思います。

一番気になった内容

本書で一番気になったのは、犯罪に関わらずとも、大人になり、認知能力が足りないために生きづらい大人がたくさんいることを示していることです。

現在の指標では支援が必要か境界上にいる大人が多数おり、生きづらくなっていいると書かれています。その人たちは、一見問題があるように見えないので、支援を受けることがありません。

そんなことが書いてあったので、もしかしたら、支援が必要な人は身近にもいるんじゃないのかと考えるようになりました。

仕事をしていても、伝えたいことが全く伝わっていない、もしくは全然違う伝わり方をしている時は無いですか?

こういう時は、伝え方が悪いんだろうなと、発信者側に問題があるとずっと考えていたのですが、もしかして違う場合があるのではと疑問になりました。

受け手側が読んだ内容、聞いた内容が十分に理解出来ない場合がありうると考えると、やり方を変えないといけません。一見してはわからないので、非常に難しいことですが、何が苦手なのか、相手のことを見極める事が求められるのかもしれません。

本書を読んで欲しい人

本書は、子育てするにあたり、我が子の成長をよく観察し、援助している際に参考になるので、お父さん、お母さんは読んで損はないと思います。

仕事ができるビジネスマンは、認知能力が高いため、処理速度が速く、突然のアクシデントにも対応できます。ただ、世の中にはそれが出来ない人が多くいることを認識し、人によって接し方を変えるための参考にするという意味で、本書はビジネスマンにも有益な本だと思います。